ホテル紹介Introduction

澎湖｜月橘Villa 青空の下水面に映る伝統建築で古典的な休暇を 青空の下水面に映る伝統建築で古典的な休暇を 澎湖島西部に延びる県道201号で車を走らせていると、市街地のにぎやかさは次第に遠のき、視界がだんだん開けてきた。思わずカントリー・ミュージックを口ずさむ。時を重ねた者独特の貫禄を民宿「月橘Villa」は放っている。小道で旅人たちが訪れるのをそっと待っているのだ。 心地よい静けさと建物へのこだわり オレンジの煉瓦を基調とした豪華な造りの門。鮮やかな花柄の磁器で彩られた標識には「月橘」と書かれている。中に一歩足を踏み入ると、涼しげな風が吹き、池に浮かぶハスのつぼみたちをやさしく揺らした。顔を上げると、鞍の形をした屋根の部分を花や鳥の形をしたタイルの数々が鮮やかに彩っているのが目に入る。目を凝らしてよく見てみると、近年存続が危ぶまれている伝統技術「剪粘」で作られているのが分かった。オーナーのWellさんによれば、リフォームは伝統建築の修復を専門に請け負う技師に依頼したそうだ。建物の構造はそのままに、澎湖特有の珊瑚石灰岩を使い、新たな命を吹き込んだ。全ては旅人に伝統建築が持つ優雅な美しさを感じてもらうためだ。 オレンジ色の太陽が月橘の屋根の上まで来ると、建物の一つ一つのパーツが日の光を浴びてきらきらと輝く。太陽が傾くと残りの光は後を引きながら去っていき、夜の光が灯される。黄色い灯りが暮れ方の空を優しく照らす。光と影が時間とともに変わっていくのにつれ、水面に映る建物の姿も移ろいでいく。その姿は華やかでいて、静かだ。 古いけど廃れていない、上品だけどリラックスできる空間 レトロな門の後ろに隠れていたのは、なんとプライベートプールだ。伝統建築の中にこんな現代的な贅沢があるなんて。水面にはバカンスの楽しい気分が映っているかのように見えた。金箔が塗られた赤色の木の扉を開けると、中華風の古い家具が並べられた優雅な室内が現れる。ひじ掛けが付いた立派な椅子にレトロな棚、金色の飾りがついたベッド枠――どれも上品で細やかだ。 少し休んでいると、流木の穴から光が漏れてきた。澎湖のお茶「風茹外婆茶」を入れてゆっくり味わう。ハスの花が描かれた流しでホコリを洗い流し、屋根の後ろで夕焼けの余韻がかすかに残るのを見ながら、夜の訪れを待つ。今日はゆっくり眠れそうだ。 静穏な景色を自分だけのものに 朝が訪れると、笑顔をたたえた係員が豊富な朝食を準備してくれる。まるまるっとした肉団子のもち米蒸し、サクサクの焼き餃子、冷たい紅茶、そして地元の人々も大好きな「鐘記焼餅」。最後にはフルーツサンドも出てきた。何品もの料理が口の中にこの上ない満足感を残してくれる。まるで中国の伝統的な音楽の生演奏のように、時に唄い、時に演奏が入り、全てがバランスよく絡み合って完璧に融合している。 扉を開けて月橘を出た。昼前の太陽は燦燦と池を照らしている。水面に近づくと、ハスの花が咲いているのに気がついた。魚たちが葉の隙間を行ったり来たりしているのを眺めながら、この景色を心の底にこっそりとしまう。澎湖と自分だけの素敵な秘密ができた。